もっと美味しい時間
「百花、ごめん。そんなに警戒するなよ。ちょっとした冗談だろ?」
「慶太郎さんのは冗談に聞こえないんだもん……」
怒った顔を見せて拗ねていると、隣に腰を下ろした慶太郎さんに頭を撫でられた。
子供扱いだと分かっていても、何故か気持ちが良くて身体を委ねてしまう私。
完全に、慶太郎さんにハマってる───
そんな自分に笑みを漏らすと、不思議そうな顔をして慶太郎さんが顔を覗き込んだ。
「何でもないよ。そうそう、バイト先、『小麦の風』でお世話になることにしたよ」
「『小麦の風』? あそこのパン屋か? でも今はバイトいらないって……」
「事情が変わったの。奥さんが足を痛めてしまって、休ませてあげたいんだって。とても雰囲気にいいお店だし、ご夫婦も優しそうだし。何より近いしね」
「あ、あぁ……。良かったな」
私の、これで満足でしょ? 的な言い方が効いたのか、慶太郎さんが照れくさそうに鼻を擦った。
「混みあうお昼の時間帯が主にだけど、後は適当に来てくれればいいからって」
「そうか。あんまり迷惑かけるなよ。俺も近いうちに挨拶に行くよ」
「えぇ~。子供じゃないんだし、そんなのいいよ」
「ダメだっ。俺はお前の責任者だからな」
責任者って……。
当分の間は、まだまだ子供扱いが続きそう。