もっと美味しい時間
「このところ、ちょっと頑張りすぎてたんじゃない? だから倒れるんだよ。無理して成長しなくてもいいって。誰も百花を責めたりしないからさ」
うんうんと何回も頷きながら、もう少しだけ美和先輩の胸で泣かせてもらうことにした。
倒れた理由が頑張りすぎていたからかどうかは分からないけれど、言われてみれば確かにちょっと頑張りすぎていたのかもしれない。
お互いの両親に結婚の報告に行って、慌ただしく最後の仕事を終え、その後引越しの準備。
緊張と疲れの連続の日々だったけれど、ここさえ乗り越えれば慶太郎さんと一緒に暮らせる楽しい時間が待っていると、夢中で頑張った。
でも引っ越してきてみれば、謎の女性が慶太郎さんの家にいて……。
結局その女性が慶太郎さんの妹さんの明日香さんだったと分かって一安心だと思っていたのに、何故か明日香さんに気に入られてないみたいで。
部屋を飛び出していった明日香さんを説得しようと意気込んで追いかければ、急にお腹が痛くなって倒れてしまう始末。
かえって皆に心配をかけてしまった。
人にはそれぞれが持っているキャパシティーというものがあって、それ以上のことをしようと思うと頭と身体がショートしてしまうのよ───
昔、母親に言われたような気がする。
きっと今の私の状態は、そんなところだろう。
無理は禁物!
私は私らしく!
その言葉を胸に刻むと、美和先輩とバス停に向かった。