もっと美味しい時間  

約束通り土曜日は、京介の案内で大阪観光を楽しんだ。
でも───

「何で、慶太郎さんもいるの?」

今日は営業部の部長たちと一緒に、取引会社の展示会に行くと聞いていた。
絶対に断れないって言ってたのに……。

「京介だけ楽しむのを、放っておけるか」

「責任ある立場の大人が、言う言葉じゃないな」

京介もこれには呆れ顔だ。
私もそう思うけど、後が怖いから言うのを控えておこう。

「でも仕事は大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないだろ。俺がどれだけ苦労したことか……」

京介が項垂れると美和先輩が近くに寄って、そっと背中に手を当てた。
その仕草がやけに女らしくて、京介に嫉妬してしまいそうだ。

それにしても美和先輩に京介、すごく良い感じじゃない。
私まで嬉しくなっちゃうよ。

隣にいる慶太郎さんを見上げると、そんな二人の微笑ましい光景を見て安心したのか、笑顔で正面を見据えたまま私の肩を抱いた。

「京介と若月。このまま上手くいくといいな」

「うん」

「百花も若月が大阪に来てくれたら、嬉しいもんな」

「うん」

それは、もちろんっ! 
慶太郎さんの身体にしがみつくと、ピンっとおでこを弾かれた。

「公衆の面前で、やたらめったら抱きつくな」

「慶太郎さんがそれを言うっ?」

離れろと言う慶太郎さんの身体に必死にしがみつき、京介と美和先輩は呆れ顔。通りすがりの人達から、笑われたのは言うまでもない。

そして楽しい時間はあっという間に過ぎ、翌日の日曜日に美和先輩は帰っていった。

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