もっと美味しい時間
「こっちに引っ越してきてからずっと美和先輩がいたから、何となく寂しいね」
明日からパン屋での仕事があるとはいえ昼間は一人だと思うと、ついそんな言葉が口から出てしまう。
「そうか? 俺は全然寂しくないけどな。てか、いちいち口うるさい若月がいなくて、ホッとしてるよ」
「私と慶太郎さんじゃ、美和先輩に対する想いが違うもんね。寂しいなんて慶太郎さんに言った私がバカだった」
フンッとそっぽを向いて慶太郎さんに背中を見せると、その背中を指がなぞる。
思わぬ感覚にくすぐったくて、ついつい笑ってしまう。
「百花が好きなのは誰だよ?」
そんなこと、言わなくても分かってるくせに……。
最近の慶太郎さんは、その言葉を求めてくる。
「慶太郎さんだよ。決まってるでしょ?」
「だったら、俺が傍にいれば寂しくないだろ」
スッと腰のあたりから手を差し込んできて、後ろから抱きしめる。左肩に顎を乗せると、唇で耳朶を喰み引っ張った。
「イヤ……」
「ホントに嫌なのか? 百花は、耳や首筋あたりが感じるんだろ?」
そう言いながら、指は首筋から鎖骨までをゆっくり辿っていった。それはまるで私の反応が良い場所探しているのか、動きがとても丁寧で且つ淫靡な雰囲気を醸し出す。
「百花が寂しいと思うなら、そう思わないように毎晩でも抱いてやる」
それはちょっと……と言いたくても、もう頭も身体もそうは言わせてくれなくて。
そのままソファーでお互いを欲しいままに、激しく求め合ってしまった。