もっと美味しい時間
ベッドから降り窓際まで行くと、カーテンを開けた。外はもう薄暗く、大通りを照らす街灯もつき始めていた。
「あっ」
大通りの向こうに木々が生い茂る一帯があり、その向こうに慶太郎さんと私が住むマンションが見える。
「そうか、ここは公園の反対側なんだ」
この病院が住んでいるところから近いと分かると、少しだけ気持ちが落ち着いた。
と言うことは、『小麦の風』も近いんだ。もうお店は閉めたかな。
結局迷惑を掛けちゃって……。
潤んできそうな涙を堪えるため強く目を瞑ると、急に立ったからか少しふらっとした。
その身体をベッドに戻すと、病室内をキョロキョロと見渡した。
この部屋、個室は個室でも、特別個室と言うやつじゃないだろうか。
部屋の広さもさることながら、置いてある家具や電化製品も高級そう。それに四畳半ほどだけれど、畳の和室まであった。
「一泊いくらかかるんだろう……」
思わず金額の心配をしてしまう。
私がどんな病気だったとしても、この部屋は身分不相応だ。
それに長い入院生活に、こんな広い部屋で一人では寂しすぎる。
先生か看護士さんが来たら、大部屋に変更してもらおう。
そんなことを考えながらしばらくボーっとしていると、廊下からバタバタと慌ただしく走る足音が聞こえ、この部屋の前で止まった。