もっと美味しい時間
看護士さんが姿を消すと、病室内に沈黙が訪れた。
お互い顔を合わせられないまま黙っていると、椅子に腰掛けた慶太郎さんがゆっくりと手を伸ばし私の頬に触れた。
「怒鳴って悪かった。身体、大丈夫か?」
いきなり頬に触れられてビクッとしてしまったけれど、穏やかな、でも心配そうなその声に、私の心は溶かされていった。
「うん、今は大丈夫。私の方こそ、本当は慶太郎さんが来てくれて嬉しいのに、素直にありがとうが言えなくて……ごめんなさい」
慶太郎さんと目を合わせ頬に触れている手に自分の手を重ねると、ベッドに腰をかけ直した慶太郎さんが優しくキスをした。
「慶太郎さん、ここ病院」
照れくさくて俯きそう呟くと、
「今は誰もいない」
と私の顎に指を当てて上を向かせ、もう一度唇を重ねてきた。
さっきとは違うどんどん深くなっていくキスに応えようと、一生懸命頑張りすぎて、意識が朦朧としてきた。
「おいっ大丈夫か? お前が病人なの、一瞬忘れてたよ。悪い……」
苦しくなった息を整えている私を抱きしめ、優しく背中をさすってくれる。
「悪くない。私も慶太郎さんとキス……したかったし」
大阪に来る前は一週間会えないなんて当たり前で、寂しくてもそれなりに我慢できていたのに、一緒に暮らすようになると、一日たりとも離れていたくなくなってしまった。
思っていた以上に出張などで家を空けることが多く、思っていた以上に寂しさを感じてしまったからかもしれない。