もっと美味しい時間  

「こんな時に傍にいてやれなくて、悪かったな。で、今回倒れた原因は分かったのか?」

慶太郎さんの質問に、ううんと首を振る。

「まだ先生、来てないのか?」

慶太郎さんから少し身体を離し、顔を上げた。

「来たよ、曽我部先生が。慶太郎さんのお友達なんだってね、あの人。明日香さんが教えてくれた」

「そうか。京介と違って、あいつ良い奴だっただろ?」

「うん、良い人だったけど……」

さっきの曽我部先生の何かを言い淀んだ姿を思い出し、気分が沈んでいく。
忘れていた不安が蘇り、目に涙が溜まってきてしまった。

「何泣いてんだよ。どうした? 何かあったのか?」

慶太郎さんをジッと見つめたまま、頬に涙が伝う。

「曽我部先生、私の病状を隠してる。僕は担当医じゃないからって誤魔化してたけど、きっと何かを知ってるんだと思う。あの表情あの感じからして私の病気、
軽いものじゃないんだと……」

慶太郎さんの顔を見ていたら急に胸が苦しくなってきて、これ以上は言葉を発せられなくなってしまった。
涙は止まることを忘れてしまったかのように流れ続け、身体は小刻みに震え出した。

その身体を、慶太郎さんがギュっと痛いくらいに抱きしめた。

「百花、お前は一人じゃない。俺がいるだろ? 大丈夫だ、俺が何とかしてやる」

「慶太郎……さん……」

慶太郎さんの背中に両腕を回すと、私も力いっぱい彼を抱きしめた。
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