もっと美味しい時間
「もう、それならそうと言ってくれればよかったのに」
その隙を与えず、いきなり怒鳴りつけたのは、どこのどなたでしたっけ?
いまだに叩かれている慶太郎さんが、可哀そうになってきた。
曽我部先生は申し訳なさそうに頭を掻き、苦笑しながら立ってるだけだし。
全く、訳の分からない状況だよ。
でも、さっきの女医さんの言葉……。
今はまだ、心穏やかに過ごさせてあげないとダメ───
あれはどういう意味なんだろう……。なんて、考えなくたって、目に前の先生に聞いてみればいいじゃないっ!
笑い上戸なのか、何かツボにハマってしまったのか、まだテンションの高い女医さんのの袖を掴むと、ちょんちょんと引っ張った。
「あ、あの……」
その行為に気づいた女医さんが、笑い涙を拭いながらこちらを向いた。
「あ、ごめんなさいね。何か、面白くって」
こっちは全く面白くないんですけど……と、言うのは止めておこう。
袖から手を離しベッドに姿勢よく座り直すと、女医さんも白衣の乱れを直して私に向き直った。
「私は結城しのぶ。産婦人科の医師で、あなたの担当医です。よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いし……あれ? 結城先生、今、産婦人科の医師って言いました?」
「ええ、言ったけど。それが何か?」
「それは私が、何か婦人科系の病気ってことでしょうか?」
「いいえ。病気じゃなくて妊娠ですけど? 今は3ヶ月に入ったところかしら」
そう言うと、愛おしそうに私のお腹に手を当てた。