もっと美味しい時間  

「えぇぇぇ~、妊娠っ!?」

私が? この私が妊娠してるって言うの? まさかこのお腹の中に、小さな命が宿っているなんて……。

思ってもみなかったことを突然突きつけられて、どう反応していいのか分からない。
助けを求めるかのように慶太郎さんを見てみれば呆然と立ち尽くしていて、心ここにあらずって感じだ。
これまた困ってしまった私は、曽我部先生に目線を移動した。
するとそれにすぐ気づいた先生が、慶太郎さんに近づく。

「おい、慶太郎。お前までそんなんでどうするんだよ。ほら、彼女に何か言ってやれよ」

曽我部先生が慶太郎さんの背中をバシッと叩くと、我に返った慶太郎さんが私の手を両手で包み込んだ。
そして少し潤んだ瞳で私を見つめると、固く閉じていた唇を動かした。

「俺の子だよな?」

私を始め曽我部先生と結城先生も、慶太郎さんの言葉に目が点。
全く慶太郎さんたら……この期に及んで、そんなこと言うなんて。
でも私を疑っての言葉じゃなくて、気が動転してしまって出た言葉だと思うから、ここは怒らないでいてあげよう。

「当たり前でしょっ!!!  慶太郎さん以外に誰がいるっていうのっ?」

「お前、身に覚えないのかよ?」

曽我部先生、ここでそのツッコミはどうかと思うんですけど。
それに慶太郎さんが、そんなこと覚えてるはずがない……

「いや、あるよ。多分、神戸に行った時の夜だな。あの日は俺の両親にこいつを紹介しに行って、結婚の了解も得たから気分良くってさ。つい気が緩んで、避妊するの忘れて何回も……」

「イヤーーーッ!!! そんなこと話すなんて、慶太郎さんのバカーーーっ!!!」

握られていた手を離し手の甲をギュっと抓ると、慌てて布団の中へと潜り込んだ。

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