もっと美味しい時間
曽我部先生が病室から出て行くと、今までの騒がしさが嘘のように静かになる。
その静けさが恥ずかしさを増強させてしまい、慶太郎さんの顔を見ることができなくなってしまった。
だって曽我部先生の態度を勝手に勘違いして、重い病気だと思い込んで大泣きしちゃったんだよ。私の言葉を真に受けた慶太郎さんは、これまた結城先生に勘違いされて怒られる始末だし。
申し訳なくて、顔が上げられないよ……。
ベッドの上で布団をギュッと握っていると、慶太郎さんがベッドに腰掛け、私をそっと包み込んだ。
「誰が軽い病気じゃないって? マジで心配しただろ、このバカがっ」
そう言って私の顎を掴み上を向かせると、おでこを軽く小突いた。
「痛い……」
「心配させた罰。で、これは、病気じゃなくて良かったなの……」
と、そこまで言うと、いきなりキスをした。
「慶太郎さん、ここ病院」
「それ、さっきも聞いた。二日会えなかったんだ。キスくらいさせろ」
相変わらず勝手だ。でも、私の前だと甘える慶太郎さんは可愛くて、つい許してしまう。
惚れた弱みというのだろうか。
慶太郎さんの手を握り顔の近くまで持ってくると、唇を寄せる。そして手の甲にチュッとキスをした。
「慶太郎さん、来てくれて嬉しかった。ありがとう」
素直な気持ちを伝える。
「ああ。仕事も大事だけど、百花も大事なんだ。分かるよな?」
そうだった。慶太郎さんは、どちらかひとつをおろそかにするような人じゃない。きっと私が心配することなく、仕事も上手く片付けてきたんだろう。