もっと美味しい時間
「百花の考えてることなんて、俺には手に取るように分かるんだよ」
「そうなの?」
「お前、単純だからさ」
単純っ!? それって簡単に言うと“バカ”ってこと?
もうっ!! こういう口が悪いところ、ほんと昔から変わらない。
唇を尖らせ、ふいっと横を見ると、もう一度ベッドに腰掛けて私の腰を抱き寄せた。
「そんな怒るな。いい意味で言ってんの。俺みたいに融通がきかない男には、百花みたいな女がいいってこと。分かるか?」
「分かんない」
「やっぱ百花は可愛いわ」
そう言うと私を抱きしめ、いつもの様に盛大に笑い出した。
全く意味が分かんない。赤ちゃんが出来て嬉しすぎて、頭がどうかしちゃったんじゃないの?
でも慶太郎さんが、あまりにも嬉しそうだから、私まで一緒に笑ってしまった。
それも落ち着き始めると、慶太郎さんが真剣な目で私を見つめた。
「お前が倒れたって連絡もらった時、俺どうしてもすぐに東京を離れられなくてさ。だから、大阪にいることを知ってたから明日香に電話したんだ。百花のところへ行ってほしいって頼んだら、文句ひとつ言わないで『分った』って」
「本当に?」
「ああ。あいつ、何だかんだ言ってるけど、百花のこと認めてくれてるんじゃないかな」
そう言われて、ここで目を覚ました時のことを思い出す。
慶太郎さんと同じ温もりと鼓動が、私を安心させてくれてたんだ。
「明日香さん、私が寝ている間、ずっと手を握っててくれたみたいなの。嬉しかった……」
「明日香も分かってくれてる。今回の妊娠のことだって、きっと喜んでくれるはずだ」
慶太郎さんのその言葉は、間違っていないだろう。
早く、明日香さんにも赤ちゃんが出来たこと、伝えたいな。
私も慶太郎さんに抱きつくと、大きな胸に顔を埋めた。