もっと美味しい時間
それから30分後、五時を少し回ったところで玄関のチャイムが鳴った。一応確認の為インターホンに出る。
「はいっ」
画面に映ったのは……。
『ただいま~』
櫻井京介……。一気にテンションが下る。そのまま玄関に向かうと、ため息をついてから鍵を開けた。
「お帰りなさ……」
ドアを開けた途端、ギュっと抱きすくめられて身動きがとれなくなってしまう。
慶太郎さんだと思い、自分からもキュッと抱きしめた。そして、ゆっくり目線を上げると……。抱きしめているはずの慶太郎さんの姿が目に入る。
と言うことは……。
「百花ちゃんって、結構大胆?」
「っ!?」
「京介っ、百花から離れろっ!!」
慶太郎さんの大きな声が、廊下中に響き渡った。
私も慌てて離れようと、身体に力を入れる。
「櫻井京介、離れてっ!!」
「まだフルネームで呼ぶんだ。京介でいいって言ったのになぁ」
「そんな事はどうでもいいのっ。早く離れてっ。慶太郎さんっ、助けてっ!!」
どんなに力を出しても、大の大人相手には何の抵抗力にもならない。
慶太郎さんが櫻井京介の肩を掴むと、今までに一度も聞いたことのない声を出す。
「京介、いいかげんにしろ」
その冷たく怒りの感情を露わにする声に、櫻井京介の顔が引きつる。
慶太郎さんでも、あんな声出すんだ。私も驚きで、声が出ない。
「慶太郎、冗談だって。そんな怒るなよ」
「これからは冗談でも、百花に触れるな。いいな?」
「はいはい……」
櫻井京介が呆れたようにそう言うと、チッと舌打ちをしてから私の身体を離した。