もっと美味しい時間  

慶太郎さんが出ていってまだ数分しか経っていないのに、長い時間待っているような気持ちになる。
止まらない血を眺めてため息をつくと、ベッドに倒れ込んだ。
怪我をした足よりも心が痛い。酷く苦しむ胸元をギュっと掴むと、目を閉じる。
するとリビングから、言い争うような声が聞こえてきた。

『女同士だし、私が手当してあげるわよ』

『いいって言ってるだろっ!!』

『おいおいっ、そんなことで言い争うなよ』

『とにかく百花のことは俺がする。お前たちは一切手を出すなっ』

その言葉を最後に、声は聞こえなくなった。
慶太郎さんの足音が寝室へと近づいてくる。目を開け身体を起こすと、慶太郎さんが出ていった時と同じように座る。
ドアがガチャっと音を立てると、身体がビクッと跳ねてしまった。

「何、ビックリしてんだよ。ほらっ、足出して」

私の前に跪くと、まるで壊れ物を扱うかのように私の足を自分の膝に乗せた。
いつもはもっと大胆な姿を見せているのに、ただそれだけのことが恥ずかしくてしょうがない。
俯き黙ったままでいると、足の手当をしながら真剣な声で話し始めた。

「百花、俺の話を黙って聞いてくれるか?」

きっと彼女のことだろう……。一瞬でそう悟ると、一度だけ頷いた。

「もう気づいてると思うが、あいつ……綾乃とは、以前からの知り合いだ」

あの人、綾乃って言うんだ。ただの知り合いじゃないよね。
慶太郎さんの話しを、意外と冷静に聞けている自分に驚く。
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