もっと美味しい時間
ベッドから立ち上がると、左足に出来た傷が痛み倒れそうになる。それを慶太郎さんが抱き留めてくれた。
「それにこの足。これじゃコンビニまで行けないだろ?」
「ゆっくり歩けば……」
「百花っ」
無理矢理歩き出そうとした私に厳しい声がかかり、強く腕を掴まれてしまう。
なんで私が怒られなきゃいけないのよっ!!
腕を掴んでいる手をおもいっきり振り払うと、慶太郎さんに厳しい目を向けた。
「ひとりになりたいのっ!! 私なんかほっといてよっ!!」
「ほっとけるはずないだろっ!! 俺が信用できないのか? 俺の気持ちや身体はお前だけのものだって!!」
「慶太郎さんを信用してないんじゃないのっ。慶太郎さん気づいてる? 綾乃さんはまだ慶太郎さんのこと好きだよ?」
「それは……」
「実は私、彼女に昼間会ったんだ。もちろん、慶太郎さんの元カノだとは知らなかったよ。でもちょっとあって慶太郎さんが私の彼氏だと知ったら、私に対する態度が全く別のものになってしまって……」
また涙が溢れる。
どう頑張ったって、あの人に勝てそうな気がしない。
慶太郎さんを取られてしまいそうで怖い。
「こっちに来てから知ったんだが、あいつは同じ会社で秘書をしていた。京介がヘッドハンティングしたらしい。そして今は俺付きの秘書をしてる。ずっと迷ってたんだ、お前に言うべきかどうか……。言って心配かけたくなかった。俺の気持ちが変わることは絶対にないっ。だから俺を、俺だけを信用しろっ」
秘書さん……それも慶太郎さん付きの……。
離れて暮らしている私と違って、毎日一緒にいる綾乃さん。マンションはすぐ隣。
信用しろと言われても、その現実を受け入れるのは、私には時間が掛かりそうだった。