もっと美味しい時間  

結局私の頑固さに折れ、コンビニに行く事に渋々OKを出した慶太郎さん。
最初は「俺も一緒に行く」とうるさかったけれど、それでは意味がない。
冷静さを取り戻すためにも、今はどうしても一人になりたかった。

もう時刻は午後六時を回っている。4月も後半、少しづつ日が長くなってきてるとはいえ、この時間はもう薄暗い。
大通りまで出る道は街灯も少なく、人通りも少ないからとかなり心配された。
足のこともそう。体重がかかるとズキンと痛む。でも歩けない程のこともない。少し時間はかかるが、そのほうが今は好都合だし……。
昼間の格好にスプリングコートを羽織り財布を持つと、眉間に皺を寄せたままの慶太郎さんに見送られ玄関を出た。

やっぱりこの時期、夜の外気は冷たい。
それでもすぐには帰りたくなくて、コンビニとは逆の方向に向かう。
慶太郎さんには寄るなと言われたけれど、もう散ってしまった公園の桜並木を歩く。
本当は明日、慶太郎さんを誘って公園内を散歩しようと思っていた。家の中ばかりと言うのも味気ないし……。
でも今のこの気分じゃ、とても無理。すぐに喧嘩腰になってしまうのが目に見えてる。
で、明日には帰らなきゃいけないし、ひとりで歩いてみようと……。
少し頬を冷やしながら桜並木の小道を抜けると、目の前には大きな池が水面を風が揺らしていた。
月が反射でキラキラしていて、とてもロマンチックな気分だ。
こんな素敵な景色なのに、私は一人ぼっち。
手を繋ぎ幸せそうに会話しているカップルとすれ違うと、急に寂しさが押し寄せてきた。
脳裏に、慶太郎さんの顔が浮かぶ。

 
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