もっと美味しい時間  

私って、勝手だ……。
ひとりがいいと無理矢理出てきたのに、寂しくなると一緒にいたいと思っちゃうなんて……。
泣いたら綾乃さんに負けてしまいそうで泣きたくないのに、また涙が頬を伝い始める。
立ち止まり、その涙を拭っていると、後ろで落ち葉を踏む音が聞こえた。

「そこの彼女。こんなところで一人で泣いてると、危ない人に襲われるよ」

聞き覚えのある声に、振り向かず返事をする。

「櫻井京介より……危ない人はいない……から、今は大丈夫……でしょっ!!」

怒りながらも鼻をすすり、途切れ途切れの言葉に櫻井京介が笑い出す。

「怒るか泣くかどっちかにすればいいのに……」

それが出来たらやってるよっ!
今までの私なら、そう反論したんだろうけど、今はその気力が保たない。
はぁ~っとため息をつくと、近くにあったベンチに腰掛ける。

「おいおい、いつもの威勢はどうした? 俺に絡んでこないのか?」

「絡めるほど余裕ない。今は何も考えたくない」

「こりゃ重症だな」

呆れたのか心配したのか、いまいち分からない言い方をすると、私の隣にどかっと座った。身体が触れ合う距離に驚き、少し横にずれる。すると、また「よっこいしょっ」と言って身体を寄せてきた。

「何でくっつくんですかっ?」

「えっ? だって泣いてたってことは寂しかったんでしょ? だから、そばに居てやってるんじゃないか」

「だれも櫻井京介には頼んでないんですけどっ!!」

「なぁ、その“櫻井京介”っての止めない? 俺、一応あんたより年上だし、いちいちフルネームで呼ばれるのはちょっとさぁ……」

まぁ、言われてみればそれもそうか。
じゃあ、何て呼べばいいんだろう……。

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