もっと美味しい時間  

「櫻井さん?」

「だから、そんな他人行儀な呼び方は嫌なんだけど」

「でも他人だし……」

「ほんと百花ちゃんって、俺にキツイよねぇ~」

きっと、私とは合わないタイプ。だからか、ついついキツイ態度になってしまう。
でも逆に言えば、彼には何でも言いやすいというか、気を使わなくてもいいというか……。
そうそうっ、『近所の付き合いの長いお兄ちゃん』みたいな感じっ!!
会えば憎まれ口叩き合うんだけど、決して嫌いな訳じゃなく……。
そう……。ちょっと軽い感じが気になるだけで、嫌いではない。
慶太郎さんの親友なんだもん、悪い人じゃないと思う。
でもっ!! 好きじゃないからっ!!
そんな人をどうやって呼べばいいんだか……。
さん付けダメ! 呼び捨てダメ! フルネームもダメ!
じゃあ残るは……。

「京様は、どうしてここに来たの?」

「きょ、きょ、京様ぁ~!!」

夜の静かな公園内に、櫻井京介の声が響き渡る。その様子があまりにも滑稽で、私も大きな声で笑ってしまう。

「ったく、冗談じゃないぞ。でもまぁ、ちょっと元気出たみたいだし良しとするか。それに、様って言うのも悪くないしな」

そう言って、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
乱れた髪を直しながら考える。
櫻井京介……すごく気をつかってくれてたんだ。
私を元気づけるため? 寂しさを紛らすため?
そんなのはどっちでもいい……。
今は、櫻井京介のその優しさを、素直に受け入れてみよう。
心にそう決めると立ち上がり、今度こそは本当にコンビニに向かうため、歩き出した。



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