もっと美味しい時間
特に何かが欲しかったわけじゃない。出掛ける口実に思いついたのが『コンビニに行く』だけだっただけ。だからと言って何も買わずに出るのはちょっと……。
私の後ろをついて歩く櫻井京介を気にしながらも、大好きなチョコレート菓子を幾つか手に取る。それを頭の上から伸びてきた手に取られてしまう。
「甘いもんばっかだな。太るぞ」
「ストレス発散には甘いモノがいいのっ!」
「へぇ~、ストレス溜まってんだ」
分かってるくせにニヤニヤ笑うその顔……。やっぱり気に食わない。
私から奪い取ったチョコレート菓子とホットコーヒーを二本レジに出すと、会計を済ませてしまった。
「京様、自分の分は自分で払うよ」
櫻井京介に買ってもらう理由がない。財布から千円札を出すと「はいっ」と言って手渡した。
「これくらい奢ってやるよ」
「でもっ……」
有無を言わさず、コートのポケットに千円札を突っ込まれてしまう。
また返したとしても、受けとってもらえないよなぁ……。
今回はありがたく奢ってもらおう。
先にコンビニから出ていってしまった櫻井京介を追いかけていくと、店の外で立ち止まっていた彼にぶつかってしまう。
「京様っ。そんなとこで立ってたら……」
「慶太郎が迎えに来てるぞ」
「えっ……」
櫻井京介の背中から顔だけ覗いてみると、怖い顔をした慶太郎さんが立っていた。
別に悪いことをしているわけじゃないのに怒られてる気分になり、櫻井京介から離れると肩をすぼませ俯いた。