もっと美味しい時間
「それで百花。週末は楽しかった?」
「う、うん。まぁそれなりに楽しかったけど……」
「何よ、それなりにって?」
「実はね……」
納得いかない顔をして詰め寄ってくる先輩に、先週末に怒った事の一部始終を話した。
私の話を聞いて、だんだんと美和先輩の顔が険しくなっていく。コップに半分残っていたビールを飲み干すと、ため息をついてからコトリとコップを机に置いた。
「ふ~ん。で、その女と決着もつけないでノコノコと帰ってきたんだ」
「ノコノコって。慶太郎さんが大丈夫って言ってくれたし……」
「まぁ男の人は、みんなそう言うよね。でも女はなかなか諦めない。百花がそばにいないことをいいことに、東堂課長に迫ると思うわ」
綾乃さんが慶太郎さんに迫る?
綾乃さんは、慶太郎さんが一度は本気で好きになった人。そんな人に迫られて、慶太郎さんが落ちないとも限らない。綾乃さんとちゃんと話しをしてくれるって言ってたけど、それだってどうなることか……。
私なんで、安心しきって帰ってきちゃったんだろう。
一気に食欲が無くなり箸を置くと、寺澤くんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「藤野、大丈夫か? 若月先輩、もっと違う言い方あるんじゃないっすか? これじゃあ藤野が可哀想ですよ」
「寺澤は黙ってて。これは百花のために言ってるの。いくら結婚の約束をしたからって、指輪があるからって、それが絶対とは言えないんだよ」
「…………」
「その綾乃さん? と東堂課長だって、大学卒業して離れちゃったのが原因で別れたんでしょ? 離れてるって言うことは、そういうことなんだよ」
そうか……そうだよね。
私と慶太郎さんだって、だんだんと音信不通になって自然消滅しちゃうかもしれないんだよね。
いきなり重い現実を突きつけられて、目の前が真っ白になってしまった。