もっと美味しい時間
今週末も大阪に行くと決めた翌日、今やっている仕事を早く終わらせるために、いつもより早い時間に出勤した。
いつも通り歩いて会社まで向かっていると、たまにランチを食べに行く喫茶店を通り過ぎたところで、後ろから声を掛けられる。
「百花ちゃんっ!」
こんな朝早くに名前を呼ばれるなんて、誰?
少し躊躇いながら振り返ると、そこには意外な顔があった。
「京様っ!?」
シーンと静まり返っている一本道に、私の声がこだまする。
いまさら遅いと分かっていても、慌てて口を手で押さえた。
「百花ちゃん……やっぱりその呼び方……」
「やめたほうが、よさそうだよね」
あははと情けない笑いを漏らすと、京介が手招きをした。
「いつもこんなに早く会社に行くの? まだかなり早いし、モーニング付き合ってよ」
「でも……」
「慶太郎の話、聞きたくない?」
慶太郎さんのっ!?
何とも美味しそうな話で、私をあっさりとゲットしてしまった京介。
「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」
京介のニヤリと笑う顔に悔しい思いをしながらも、喫茶店へと入って行く。