もっと美味しい時間
「京様、何で私は頬を抓られてるの? 痛いから離してっ」
「百花ちゃんは、まだお子様だな。まっ、そこがあんたの良いとこか」
手を離すと一度だけ頭を撫でてから、今までとは違う仕事モードの顔にスッと戻す。
慶太郎さんといい櫻井京介といい、デキる男はさすがに切り替えも早い。
感心してその姿を見ていると、どこかへ電話をかけだした。
「あっ俺、朝早く悪い。もう出社してる? そう、良かった……」
部下に何かを指示しているのか、私から少し距離をとって話している。
私のせいで京介の予定も狂わせてしまったのかもしれない。でもここは、京介の優しさに甘えておこう。私ひとりでは、こんなに早く大阪に向かうことは出来なかったのだから……。
「よしとっ。ところで百花ちゃんは午前中で上がれるの?」
「あっ、そうだったっ!! 今やってる仕事、終われるかなぁ……」
「まっ頑張れよ。12時にロビーで待ってる」
背中をバシッと叩かれ、気合を入れられる。
今日は忙しい一日になりそうだ。
落ちていたバッグを手に取ると、京介と一緒に会社に向かった。