もっと美味しい時間
こればっかりは大袈裟じゃないでしょっ!!
こんな人と同じマンションなんて、私と慶太郎さんの週末が平穏無事で済むはずがない。
櫻井京介の顔を見て呆れるほど大きなため息をついてみせると、がっくりと肩を落とす。
「何だよそれ?」
「いえ……。気にしないでください。今日は迎えに来ていただき、本当にありがとうございました」
荷物を抱え頭を下げると、ドアに手を掛けた。
「ちょっと待てよ。駐車場に入れてから一緒に上がろうぜ」
「えぇ~っ!? 早く私を解放して下さいよ……」
「おれは悪代官か何かかっ!」
頭を掻きながら項垂れる姿は、ちょっと笑える。思ったよりも悪い人じゃないのかもしれない。
うかつにも、小さく声を出して微笑んでしまった。
「なんだ、笑えるんじゃん」
そう言うと、櫻井京介が頭をポンポンと撫でた。
「あいつにはもったいないな……」
もったいないって……。意味が分からない。
今までの櫻井京介とは明らかに違う感じに、戸惑いを覚える。
「そ、その……。頭から手、離して欲しいんですけど」
「あぁ、悪い」
「やっぱりここで先に降ります。今日は本当にありがとうございました」
今度はドアを開け急いで外に出ると、振り向きもしないで一目散にその場から離れた。