抱き締めて言って?
その表情が可愛くて、愛しくて、キュンとした。年上で大人な彼だけど抱き締めてあげたくなる。

「君のためだけにあのセリフは言うよ。他の誰にも言わない」

深みにどんどんハマっていく。
底がなくて深い。永遠に脱出することはできないんじゃないかって。

そっと彼の頬に触れる。

「キスして?」

触れた手に彼が擦り寄ってくる。
可愛いおねだり。

両手で顔を包んで唇を親指でなぞる。いつも綺麗なフランス語を話す唇。講義室にいる多くの学生が釘付けになってるのがイヤ。

見ないで。彼は私の。

ソファーに片膝をついて距離を縮めると、目を閉じて私を待つ彼に唇を重ねた。ここが大学で彼の研究室で、いつ誰が訪ねてくるかもわからない状況なのに。
腰を引き寄せられて上に被さるような体勢になってしまった。強い力で抱き締めるから、私も首に腕を回して応える。吐息の熱いキスに身体の奥も熱くなってきた。

「悪い子だな…」

「…あなたは、ずるいヒト」

私を夢中させて離さない。こんなハズじゃなかったんだけど。
本当はあなたから抱き締めて欲しかった。あなたからキスして欲しかった。あなたからちゃんと『愛してる』って言って欲しかった。
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