おやすみ、先輩。また明日
「渡してたけど……」
「えっ。なになに桜沢、彼氏できたのっ?」
「ち、違うよ~! 全然そんなんじゃなくて」
「相手なんかどうでもいいけど、ああいうのは良くないんじゃないの?」
「え。ああいうのって?」
わたしが首を傾げると、山中さんは苛ついたようにしかめた顔を上げた。
眼鏡の奥の瞳の冷え冷えとした様子にぎくりとする。
ああ、この表情。
昨日駅でわたしを睨んでいたときと同じだ。
須賀ちゃんと言い合いしている時も怒っているけど、あれとは違う。
わたしに向けてくるこの表情の方が、ずっと怖いのはなぜだろう。
「わかんないの? 男にあげる為に部活利用してんじゃないのってこと」
「ちょ、ちょっと待って! 昨日はただ、朝迷惑をかけちゃった先輩にお詫びの印として渡しただけで……」