饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「いい加減にしなさい。そもそも神が、そんな物理的な物を欲しがるとでも思っているのですか?」

 このセリフを言いながらにっこり笑えば、いつもの魅力全開な虎邪になるのだが、笑みなく本気で馬鹿にしただけなら、ぞっとするような冷たさを纏う。

 姫は口をつぐんで下を向いた。

 虎邪はそのまま、川に沿って歩き出した。
 その間も、じっと水の中を見る。

 神明姫は、そんな虎邪を見ながら、大人しくついていく。
 もっともいまだに腰を掴まれているので、ついていくしかないのだが。

「・・・・・・ここからは、結構な町中になるわけですか」

 不意に足を止め、虎邪が呟くように言った。
 先を見ると、家並みが見える。
 今まではあまり周りに家はなく、平地や、まばらな林の中を蛇行していた竜神川だが、この先は町中を流れているようだ。

「ええ。あの辺りから、町に入っております。なので、水害が起きたら、あの辺が結構な被害を受けるのです」

「なるほど。では供物は・・・・・・ここまでは流れてこないかな。もうちょっと上流で、全て回収するということか」
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