饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 やがて、川縁に、明らかに人工の石畳が現れた。

「あそこが、その・・・・・・秘密の儀式を行うところですか」

「ええ・・・・・・」

 虎邪の言葉に頷きながら、神明姫は、知らず虎邪にしがみついた。
 そんな姫に、虎邪はまたも、へら、と笑う。

「おやおや、姫もお化けが怖いクチですか。大丈夫ですよ。姫のことは、ちゃんと守って差し上げますから」

「俺も守って」

 すかさず緑柱が訴える。
 が、虎邪は渋い顔で振り返った。

「情けないなぁ。男だろ?」

「さっきは守ってやったじゃん」

 神明姫的には恐ろしいところなのだが、すぐ横で繰り広げられる喜劇(緑柱的には真剣なのだが)に、恐怖も和らぐ。
 それでも石畳に近づくにつれて、姫の足は重くなった。

「・・・・・・ふむ。こんなところでやる祭事って、一体どういうものなのです? そういえば、今回も古典的な秘術を行うと、ここの神官が言ってました。それも、ここで行うようなものなのですか?」

「え・・・・・・」

 びくんと、神明姫が身体を震わせた。
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