饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「ああ・・・・・・やはり。秘術というのは、知る限り一つしかありません。仰るとおり、ここで行う、公になっていない祈りの儀式です」

 震える姫を支えながら、虎邪は石畳の部分に足を踏み入れた。
 そう広くもない、二、三メートル四方のスペースだ。

 川縁に突き出すように、祭壇らしきものがある。
 人の腰辺りまでの石の台で、不思議に川に向いた一辺だけが、丸く窪んでいる。

「妙な形の祭壇ですね。このへこんだ部分に、供物を置くんですかねぇ」

 ちょっと屈んで窪みに顔を近づけた虎邪は、おや、と眼を細めた。
 窪みの内側の石が、変色している。

「・・・・・・これは・・・・・・血だな」

 窪みを覗き込めば、すぐ下には川が見下ろせる。
 川のほうに視線を移した虎邪は、あ、と声を上げた。

「祭壇のこっち側は、血みどろだ」

 緑柱も同じように、窪みの上から川を覗き込むようにして、川のほうの祭壇の壁を見た。

「ほんとだ。ん~、よく見ると、祭壇からこう・・・・・・川に向かってるようだね」

 先程まで虎邪にくっついて怖がっていたわりに、血みどろの祭壇に関しては、冷静に分析する。
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