饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「緑柱は、こういうのは平気なんだねぇ」

 呆れ気味に言う虎邪に、緑柱はきょとんとする。

「血なんて別に、怖くもない」

「状況的に、不気味さが増すように思うけど?」

「そうか? むしろ血があったほうが、お化けの仕業じゃないって証明になるから安心する。殴りも斬りもできないお化けが、何で血なんて流すんだよ」

 当たり前のように言われてしまえば、なるほど、そうかもしれない。
 緑柱の理屈では、血を流すのなら生身の人間ということだ。
 それだけで安心したのか、もうシャキンとしている。
 恐るべき切り替えの早さだ。

「そういや神官が、生け贄がどうのって言ってたな。ここで行う儀式ってのは、生け贄を使うのか。とすると、この血は生け贄の血だな」

 ふむ、と納得し、振り向いた虎邪は、少し後ろで立ち竦む神明姫の顔色の悪さに気づいた。
 慌てて駆け寄る。

「姫、気分でも悪いのですか? 顔色が・・・・・・」

「いえ・・・・・・」

 神明姫は軽く首を振ったが、手は虎邪の袖を、ぎゅっと掴んだ。
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