饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「・・・・・・ああ、姫君には、恐ろしいかもしれませんね。では、とっとと出ましょうか」

 神明姫を抱き寄せて石畳から降りた虎邪は、ふと足元に視線を落とした。
 そのまま、森の先のほうを見る。

「虎邪?」

 緑柱が、訝しげに虎邪を見る。
 そして、同じように足元を見、しゃがみ込んだ。

「・・・・・・うっすら、道が出来てるみたいだね」

 神明姫が顔を巡らせれば、何となくだが、草が生い茂った中にも、微妙に獣道が出来ている。
 もっとも指摘されねば気にならない程度だ。
 今、虎邪たちは川沿いにずっと歩いてきたが、今見つけた獣道は、川から真っ直ぐ、森の外のほうへと伸びている。

「向こうは確か・・・・・・隣町と、最も近くなっている辺りですね」

 そう呟いて、虎邪は少し川沿いに歩き、また川を覗き込む。
 そして、ようやく何かを見つけたようだ。
 虎邪が神明姫に、水の中を指して言った。

「ほら姫。あそこにあるのは、前の供物でしょう」

 虎邪に促されて川を覗き込めば、水の中の岩陰に、祭事に使う木の実が集まってい、それに紛れて、ごく小さな宝石が、きらりと光っていた。
< 68 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop