饅頭(マントウ)~竜神の贄~
神明姫は、器ごと勢い良く上を向くと、残っていた酒を、一気に飲み干した。
途端に姫の手から、器が放れた。
ぐら、と身体が傾ぐ。
そのとき。
馬の蹄の音が聞こえた。
同時に、聞き覚えのある低い声。
「神明姫!!」
飛びそうな意識の中で顔を上げれば、馬が二頭、走ってくるのが見えた。
相当な速さで走る馬は、あっという間に石畳に辿り着いた。
石畳の前で馬から降り、虎邪は担いでいた荷物を、緑柱に渡した。
「おお、神官様。良かった、神官様が来てくださらないと、姫君に余計な苦痛を与えることになるかもしれぬと、気が気ではありませんでした」
歩み寄る虎邪に、ほっとしたように、老神官が言う。
虎邪は祭事のために用意されているものを、ざっと確かめた。
特にこれといったものもない。
いつもの供物と、灯りが祭壇の窪み両サイドに置いてある。
月明かりが大事なため、そう煌々と灯りを焚くわけにもいかないのだ。
あとは、祭壇の傍にある、大きな斧。
虎邪はそれに、眉を顰めた。
途端に姫の手から、器が放れた。
ぐら、と身体が傾ぐ。
そのとき。
馬の蹄の音が聞こえた。
同時に、聞き覚えのある低い声。
「神明姫!!」
飛びそうな意識の中で顔を上げれば、馬が二頭、走ってくるのが見えた。
相当な速さで走る馬は、あっという間に石畳に辿り着いた。
石畳の前で馬から降り、虎邪は担いでいた荷物を、緑柱に渡した。
「おお、神官様。良かった、神官様が来てくださらないと、姫君に余計な苦痛を与えることになるかもしれぬと、気が気ではありませんでした」
歩み寄る虎邪に、ほっとしたように、老神官が言う。
虎邪は祭事のために用意されているものを、ざっと確かめた。
特にこれといったものもない。
いつもの供物と、灯りが祭壇の窪み両サイドに置いてある。
月明かりが大事なため、そう煌々と灯りを焚くわけにもいかないのだ。
あとは、祭壇の傍にある、大きな斧。
虎邪はそれに、眉を顰めた。