饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「ふ、虎邪様・・・・・・」

 は、と我に返ると、神明姫が懸命に顔を上げて、虎邪を見ている。
 あの酒を、一気に飲み干したのだ。
 今にも身体は倒れそうに傾いでいる。

 姫は虎邪のほうへと進もうとしたが、その身体は一歩も動くことなく、後ろから老神官に支えられた。

「・・・・・・さぁ姫君。もうお眠りなさい」

 神明姫を支えながら、老神官は優しく言う。
 そして、空を振り仰いだ。
 月が、姿を現している。

「神官様」

 老神官が、虎邪を促した。
 目を動かし、斧を見る。

 あの斧で、生け贄の首を斬るのだ。
 確かに、生け贄の意識をなくしても、斧で人の首を断ち斬るのは、この老神官には重労働だろう。

「・・・・・・緑柱」

 少し後ろに立つ緑柱を呼ぶ。
 緑柱が虎邪に近づくと、虎邪は小声で何かを命じた。
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