饅頭(マントウ)~竜神の贄~
ちょっと妙な顔をした緑柱だったが、そんな彼に、虎邪はにやりと笑った。
「カミサマを、騙くらかすのさ」
きょとんとした後、緑柱は、あはは、と笑みをこぼした。
「いいね、面白い。わかったよ」
親指を立てる緑柱に笑い返し、虎邪は老神官に向き直った。
老神官は、神明姫を祭壇に据えようとしている。
が、姫は助けを求めるように、虎邪を必死で見る。
この町の者として、こういうことがあることはわかっていたが、いざ己が生け贄に選ばれたとなると、やはり恐怖に駆られる。
あっさりと受け入れられるものではないのだ。
さらに悪いことに、あまりに恐怖が強いためか、あの強い酒が効かない。
元々酒豪なのかもしれないが、変に意識が残っているため、このままでは悲劇である。
そうこうしているうちに、月は上空の木々の隙間に、すっぽりと入った。
明るい月光が降り注ぐ。
同時に、川の水が波立った。
虎邪は祭壇の前の神明姫に歩み寄った。
斧には見向きもせずに来る虎邪に、神明姫は少し安堵の色を浮かべる。
「カミサマを、騙くらかすのさ」
きょとんとした後、緑柱は、あはは、と笑みをこぼした。
「いいね、面白い。わかったよ」
親指を立てる緑柱に笑い返し、虎邪は老神官に向き直った。
老神官は、神明姫を祭壇に据えようとしている。
が、姫は助けを求めるように、虎邪を必死で見る。
この町の者として、こういうことがあることはわかっていたが、いざ己が生け贄に選ばれたとなると、やはり恐怖に駆られる。
あっさりと受け入れられるものではないのだ。
さらに悪いことに、あまりに恐怖が強いためか、あの強い酒が効かない。
元々酒豪なのかもしれないが、変に意識が残っているため、このままでは悲劇である。
そうこうしているうちに、月は上空の木々の隙間に、すっぽりと入った。
明るい月光が降り注ぐ。
同時に、川の水が波立った。
虎邪は祭壇の前の神明姫に歩み寄った。
斧には見向きもせずに来る虎邪に、神明姫は少し安堵の色を浮かべる。