ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―
 管理会社には不利益を補てんするような義務もなく、かといって委託契約を切られたくもないので、やんわりと責任回避をするのだ。
 その矢面に立つのは、ポチたち管理会社の担当者である。
 
 担当者は、自らに落ち度はないのに、所有者たちに責められ、会社の上司からは叱責され、転嫁しようもないストレスを背負わされる。
 最終的には、これこそがポチたちの言う『ツイてない』ということなのだ……。



「課長、遅くなってすみませんでした」

 ポチは、表面だけは申し訳なさそうなふりをした。

「まったく、なにやってるんだ!」

「警察の聴取が長引きまして……」

「そんなこと言ってるんじゃない!」

「は? ――と言いますと?」

「常務があのマンションを持ってるのは知ってるだろが!」

 課長はいらいらした仕草でたばこに火をつけた。

「あ、はい。そうでした」

「ったく、そのマンションで自殺を起こすなんて」

「いや、ちょっと待ってくださいよ。僕が自殺したわけじゃないんですから……」

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