ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―
あくまで専有部分――個人所有の一室の中――での出来事という体裁だからだ。
あるいは、管理組合の理事長にだけ報告して、所有者へ情報開示は理事長判断ということで、管理会社の責任を回避する。
理事長も、一個人としてはマンションの所有者なので、自殺という自分のマンションの価値を落とすような要素は、できれば内密にしておきたい。
こうして自殺という出来事は表沙汰にならず隠ぺいされる。
自殺が隠ぺいされた部屋を売るなり貸すなりするにあたり、自殺の事実を敢えて明示する所有者はほとんどいない。
そのため、管理会社が『表沙汰にしない対応』をすることで、文句を言う所有者は皆無といってよかった。
今回のケースはどうだろうか。
飛び降り自殺の遺体は駐輪場のすぐ横で見つかっている。
第一発見者のほかにも、駐輪場の利用者や騒ぎを聞きつけた目撃者や、野次馬も多かっただろう。
通報により現場には警察も到着しており、隠しようもない
いや、もし隠せたとしても、それは立派な犯罪――死体遺棄で三年以下の懲役だ。
例えば、誰も見てなかったら――という悪魔のささやきもあるだろう。