ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―

 課長はそう言って、電話機に受話器を戻したが、すぐには切らずに、ゆっくり三十秒くらい数えてから、恐ろしく丁寧に受話器を置いた。

「大島、別件でまた警察だ」

「は? 別件……ですか?」

「そうだ。別のマンションだが、そこの居住者について調べているそうだ」

「はぁ」

「管理人への事情聴取に、おまえ、立ち会ってこい」

「はい! 分かりました!」

 ポチは喜んで返事をした。
 事情聴取の立ち会いなどは、普段なら遠慮したい仕事だ。
 しかし、いま課長から逃れられるのなら、どんな仕事でも構わなかった。
 ポチは、舞うように自分の机に戻ると、かばんを抱きしめるようにして、管理部を飛び出していった。
――行き先のマンション名も、警察との約束の時間も聞かずに。

「おい、大島!! ――ったく! だれか、メールでもしておけ」

 課長は不機嫌そうに椅子へ腰を下ろす。
 そして、次の獲物を探すかのように課内を見回した。
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