ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―


 管理部を飛び出したポチは、マンションの管理人室にいた。
 管理人に対する警察の事情聴取に立ち会うためである。
 普段なら面倒くさいような仕事でも、課長の怒声から逃れられるのでありがたかった。
 管理人室の時計を見ると、警察の指定した時刻を三分ほど過ぎていた。

「まだ来ないのかねぇ」

 高齢者センター派遣の管理人は、ややいら立ったようにつぶやいた。
 同じセリフをもう五回目だ

「そろそろ来るんじゃないですか」

 ポチは、根拠もない回答を、同じく五回繰り返すことになった
 まだ若いポチは、組織上は部下にあたる管理人に対しても、年長者に対する敬意から敬語を使う。
 課長に対するそれに比べれば、かなり砕けた口調だが。
 そうでなければ、同じやりとりの三回目あたりで怒鳴りつけているところだ。

 一方、年配の管理人たちは、ポチという若い上司に対してそれなりの接し方をする。
 敬語を使わない管理人も少なくないが、かといって「ポチ」と呼ぶような管理人もさすがにいない。
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