ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―
長い社会経験があるので、そのあたりの折り合いはさすがに上手だった。
「今夜はねぇ、娘が孫を連れてご飯を食べにくるんだよ」
だから早く帰りたい、とまでは口出さない。
だが、容易に察することができた。
今回の警察の聴取は形式的なもののはずだが、それなりに時間は取られるだろう。
警察の来るのが遅くなれば、その分、帰宅時間も遅くなってしまう。
年配の管理人にとっては、仕事よりも孫と過ごす時間の方が大切なのだろう。
ポチが何か言おうとしたとき、管理人室のインターフォンが鳴った。
管理人は、早く帰りたがっている割には、のんびりとした動作でインターフォンを取った。
「はい、管理人室です」
「練馬西署の白田です」
(シロタ?)
ポチは首をかしげた。
旧式モニターのぼわっとした画面には、警察手帳らしき黒い物体を開いたスーツ姿の男が映っている。
体格や髪形などは分かるが、顔の細かい造りまでは分からない。
手帳に貼ってある写真や警察のエンブレムなどは、もちろん識別できない。