ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―
シロが表情を引き締め、ややわざとらしく咳ばらいをした。
「ゴホンゴホン! ――ええと、今回はこちらの入居者の件でお話を伺いに来ました」
「ああ、はい。……どんなことでしょう?」
管理人の顔が引き締まった。
「こちらにお住まいの『鈴木達也』(すずき たつや)さん、ご存知ですよね?」
「あー、えー、まあ、名前だけは」
「うん? と言いますと?」
「いやぁ、仕事なんでねぇ、入居者さんの名前は覚えてますが、会ったこともない人の方が多いくらいですわ」
管理人はそう言って笑うと、机の引き出しからファイルを取り出して、ページをめくった。
「ええと、――あったあった。鈴木達也さん、305号室、独身の五十歳――という届出がありますなぁ」
「直接、お会いになったことはないんですか?」
「ええ、まあ。鈴木さんの隣の人から聞いた話ですけどね、鈴木さんは朝六時くらいに出かけるんですわ。わたしゃ、八時出勤で夕方には帰っちゃいますから」
「なるほど。――その隣の人は鈴木さんと親しいのでしょうか?」
「いやぁ、たま~に部屋の前でばったり会った時に会釈するくらいだそうですよ」