ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―
その声で、ポチの眉間にしわが生まれた。
「はぁ、……またか」
ポチは小さな声でつぶやいた。
玄関にはパンプスが、きれいに揃えて脱いである。
ポチは、パンプスとは対照的に、無造作に靴を脱いで、どかどかと部屋の中へ入った。
広めのリビングに、大きなソファーと大型テレビ、壁一面の作りつけの本棚。
そして、自分の部屋のようにくつろいでいるタマ。
その目は手元の文庫本――ミステリー小説――へ注がれている。
「ン~、『ただいま』くらい言いなさいよ~」
タマは、ページをめくりながらそう言った。
そして、小説から目を離さずに、片手で器用に缶ビールをぷしゅっと開ける。
「……タマ。何度言ったら分かるんだ」
「ン~? なーにー?」
タマは缶ビールに口をつけながら、無邪気に答えた。
しかし、視線は手元の本へ注がれたままだ。
ポチの目が鋭くなる。
「ここは俺んちであって、おまえんちじゃない」
「ここはキミんちであって、あたしんちじゃない。うん、知ってるよ」