ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―
 タマは、本をぱたんと閉じると、テーブルの上の『本のタワー』のてっぺんに積んだ。
 絶妙のバランスでそびえたつタワー。
 それは有名なミステリー小説のシリーズ全巻で建造されている。
 ポチは、倒壊しそうで危ないと思ったが、
「じゃあ、なんで俺んちに勝手に上がりこんで、俺のビールを勝手に飲んでるんだ」
 と、タマを追求した。
「ビールくらい、いいじゃない。ポチはそーゆーとこ、子供の頃からケチよねぇ」
「そういう問題じゃない!」
「あー、ハイハイっと。『勝手に作った合鍵で入るな』――でしょ?」
「――そうだよ」
「それと、『俺たちは付き合ってる訳じゃないんだから』――でしょ?」
「――そうだよ」
「ワカッテマスヨー。――あ、飲む?」
 棒読み口調のタマは、まだ開けてない缶ビールをポチに差し出した。
「ホントに分かってんのか? ――ビールはいらないよ」
「じゃ、コーヒー?」
「うん」
「りょーかいっ!」
 タマはさっと立ち上がってキッチンへ行った。
 ビールの空き缶を三本、ポチに見えないようにさりげなく隠しながら。

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