ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―
 ポチは半ば呆れたが、空き缶には言及せず、『本のタワー』を、ぽっかりと開いた本棚のスペースへ戻した。
 キッチンの方からタマの声が聞こえる。
「そこの出ている本、まだ読むからしまわないでね~」
「あー、分かったー」
 ポチは返事だけして、そのままソファーへ座った。
 しまった小説を、本棚に納めたままで。


 ――ポチがこの部屋を初めて見たとき。
 第一印象は「無用に大きな本棚のある部屋」だった。
 こういった個性や特徴を出した物件が人気というのは知っていた。
 隣室との境界壁に本棚を造作することで、騒音トラブルの回避にもなるのだ。
 それでも、千冊は収まろうかという本棚は、やや大きすぎるかも知れない。
 では、いざ自分が住むとなると、読書は好きだが、そこまでの愛書家という自負はない。
 ポチは違う物件にしようと思った。
 ――しかし。
「ン~? 本だけじゃなくて小物とか雑貨を置けばいいじゃない」
 タマのその一言で決まった。
 いや、「決められてしまった」と言った方が近い。

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