ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―

「マンション管理部は大変そうだなぁ? 俺ら経理課には直行なんかないし」
 
 同期の男は、さらりと言った。
 もちろん、自殺の件は知らない。
 それは他の部署にも極秘事項だからだ。
 同期の男の言う「大変」とは、単に直行で朝早いからということになる。

「ああ、でも、受付の子に『大変ね』なんて言ってもらえるから、いいよな~」

「……そうでもないさ」

 タマの言う『大変』とは、直行だからではなく、『知っている』からだ。
 ――管理物件で自殺があったということを。
 もちろん、ポチが話したわけではない。
 タマ自身の情報網で、極秘事項を知りえたのである。
 やたら知られていると思うと、いろいろとやりにくいものだ。

 同期の男は、小声をさらにひそめた。
 ――とはいえ、エレベーター内にいる者にはどうしても聞こえてしまうが。

「なあ、ポチ? 今度さ、たまきちゃんに合コンをセットしてって頼んでくれないか?」

「またその話かよ」

「たまきちゃんが声かければ、秘書室の子たちだって来るだろうし」

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