ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―

 秘書室の女性社員――いわゆる秘書――は、ポチたちにとっては高嶺の花である。
 とても合コンなど誘えるような雰囲気ではない。
 しかし、社内で――とくに若い女性社員に――強い影響力を持つタマが誘えば、話は別だ。

 タマは社長令嬢でもなく大株主でもない。
 入社も、コネクションでもなくヘッドハンティングでもなく。
 一般採用の一般職、配属は総務課の受付業務――いわゆる受付嬢である。
 
 そのタマが、極秘事項をも知りえる情報網を持つ理由、そして社内に強い影響力を持つきっかけ。
 それは――ポチも知らない。
 
 タマに何度聞いても、含みのある笑みでかわされてしまうのだ。
 人づてに聞いた話では、二人の女性管理職による激しい派閥争いの収拾に、タマが重要な役割を担ったとか。
 その派閥争いは、社長や会長でさえ口出しができない、恐ろしいまでの『女の争い』だったそうだ。
 
 その一件以来、タマは年功や役職を超越して、女性管理職の二人の盟友となり、女性社員のナンバー3と目されるようになった――らしい。
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