ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―

 その結果の情報網と影響力ということのようだった。
 タマはちょっとしたカリスマだ。
 しかし、入社三年目の若手社員であることや、親しみやすい人柄もあり、男女の別に関わらず多くの社員から人気があった。

「――おい、ポチ? 聞いてるか?」

「え? ……ああ、聞いてるよ。一応、タマには言ってみるよ」

「ホントか! 頼むぜ。いやー、幼なじみっていいよな~」

 経理課の同期は、そう言ってエレベーターを軽い足取りで降りて行った。
 ポチは複雑な思いだった。 

 幼なじみが悪いとは思わない。
 しかし、女子社員にカリスマ的な影響力があるのはどうか思う。
 タマが一言『ポチ』と呼べば、それで確定になってしまうのだから……。
 ――ポチはネクタイをきちんと締め直した。
 タマに言われたとおりに。
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