二度目の恋

第十四章

人々は賑わいを見せていた。微かに神霧村よりは栄えていた。家の数は神霧村よりは多い。八百屋やお肉屋やお魚屋、少数の商店はあった。愁は自転車を止めた。そこに小さな一軒家がある。いや、一軒家風の郵便局だった。そこに人々は出入りした。
 「着いたよ」愁は自転車を降りた。続いて美月も降りた。二人は郵便局の入り口に入っていった。
中にはいると人々は郵便物を出す為、窓口に殺到して並んでいた。愁は片手に郵便鞄、美月も片手に郵便鞄を持ち、並ぶお客を押しのけて窓口へ向かった。
「な、何なのこの子」
「ちょっと並びなさいよ」
「僕、ちゃんと順番にね」
 様々な声が飛び交った。それでも愁は美月の手を引っ張って窓口に向かった。客を押しのけて一番前に立つと、愁は窓口の女の局員に言った。「ねぇ、局長は?」局員は愁の行動に驚き怒った口調で言った。「ちょっと愁、お客さんに迷惑じゃない」それでも愁はにこやかに言った。「局長は?」女局員は仕方なくその答えに答えた。「局長は今仕分け室よ」そう言うと「ありがとう」と愁は言い、美月の手を引っ張って客の間を突き抜けて奥の扉を開けてまた中に入っていった。
 そこには数人の局員が、数々の村や町に届ける手紙の仕分けをしていた。愁と美月は仕分けしている局員の後ろを通って、奥まで歩いていった。「シュウ!」名を呼ぶ声がした。愁が振り向くとそこに局長がいた。
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