二度目の恋
「あそこは、地盤が固いんだ」
 国利は何か思いだしたように机の引き出しを開けた。
「そうそう、写真がある」
 その写真を美月の前に差し出した。
「シャリーさんが恋した男だ」
 美月は手に取り見た。愁は美月が手に取った写真が見え、それに興味を示してテーブルを立ち上がりゆっくりと二人に近づいて横からシャシャリ出て見た。
「……これ?」
 愁は何だか分からなかった。何が起こったのか、二人は何を話していたのか、自分はいったい何処にいるのかサッパリ分からなくなった。愁はその写真を美月から奪い、手にとってよく見た。そこに写る写真の人物は、橘亨だった。


 二人は質屋を後にした。静かになった店内に国利は机に肘をつきタバコを吸った。
「お客さんか?」
 店の奥から男の声がした。
「ああ」
「珍しいな。この店に客が来るなんて」
「たまに来て何言ってるんだ」
「たまに?ああ、でもこの店は小さい頃から知ってるぞ」
「直紀は俺に何か言われるとすぐ『小さい頃から』って言う。従兄弟同士でも知らないことはあるんだ」
「ああ、だから来たんじゃないか」
「それに、客じゃない」
「客じゃない?」
「子供だ」
「子供?」
「ああ、小さな男の子と、青い目をした女の子だ」
「青い目をした女の子?」
「ああ、名は美月とか言ったかな」
「美月……で、その子が何だって」
「おまえと同じ、捜し物を見つけに来た」
「俺と?」
「ああ」
「……で、見つかったのか?」
「さあ?」
 国利と男は会話した。店の奥からタバコの煙がぷかぷかと浮かび上がってきた。その男、竹中直紀の姿だった。
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