二度目の恋
美月が台所に向かうシャリーを見ると、シャリーは光に埋もれてやがて暗闇に閉じ込められていった。その暗闇から大きな音が聞こえ始めた。ガタッ、ガタッと大きく物がぶつかる音。美月は目を開けた。布団に埋もれていた美月は、暫く目を開けてそのまま考えた。<何の音?いったい何が起こったのかしら>その音はすぐ美月のそばから聞こえる。美月は恐る恐る体を動かさずに、顔だけ横に向けた。そこには直也が何やら、いろんな物を外に放り投げている光景だ。美月は訳が分からずただ直也の行動を見ていた。そんな美月に直也は気づいた。
「おはよう!」
「おはよう、パパ」
美月は表情一つ変えずに言った。
「今日はいい天気だ」
 そう言うと部屋にあるテーブルを外に放り投げ、タンスの引き出しを開けて次々と洋服を窓の外に放り投げた。美月はその光景に驚いて、体を起こした。
「パパ、何してるの?」
「ん?おまえの物を全て捨ててるんだ。もういらん。おまえは物があるとすぐ悪さするからな」
 そう言うと、タンスの上に置かれていたぬいぐるみの数々を、放り投げ始めた。
「それはママに買って貰った物なの」
「だからどうした。もういらんだろ」
 直也は美月に構わずに物を捨てて言った。美月はそんな直也の行動を冷静に見つめ、そっと布団の下に手を入れて探り、斑と止めてそっと手を布団の下から出した。手には銀のまあるくて平べったい缶を持っていた。その缶をそっと自分のパジャマのズボンに隠した。その瞬間を直也は見ていた。「何を隠した」美月は咄嗟に立ち上がり、ジッと黙ってその場が過ぎるのを待った。「何を隠したと言ったんだ」直也が手を差し伸べて近づいてきた。「出せ、出せ、出せ!」美月はジッと動かずに耐え、直也が美月に近づき押し迫った瞬間、突然直也を押しのけて走り出し、階段を降りていった。直也も美月を追って走った。美月は階段を降りて玄関に近づくと、そこにあるリュウのマットに気づいて立ち止まり、しゃがんでそのマットを握りしめて持った。
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