二度目の恋
「いえ……何でもありません」
私はそう言うとゆっくりと歩み、窓の外の景色に気づいて近づいた。そこから見えたのは薔薇山(いばらやま)だ。あの湖のある薔薇山だ。
「高山さん……」
「なんだ?」
「ちょっと行きたいところがあるので、付き合ってくれませんか?」
「ああ……」
高山さんが返事をすると、家を出た。
家の横に薔薇畑はあった。色鮮やかに咲いていた薔薇はもう無く、ただ枯れ果てた花壇だけが残っていた。私はその道を通った。すると、目の前に聳(そび)え立つ山がある。父と私が名を付けた、薔薇山だった。山は微かに雪で染まっていた。私と高山さんは、山に入った。
山を深く行くと、霧も深まった。私は止まった。見上げると、枝に赤い糸がついている。父が付けた赤いリボンだ。もう何十年もたって、リボンという名も呼べないほどになっていた。
「ここから、入るんです」
高山さんに言った。
「何処へ行く」
「湖です」
「湖?何もないじゃないか」
「いえ、見えないだけです」
私はそう言うと、草むらに入っていった。高山さんも疑問を持ちながら入った。私は草を掻き分け掻き分けて、湖にたどり着いた。高山さんは戸惑いながら背の高い草を掻き分けて湖に向かった。
私は湖に辿り着き、驚きに満ちた。ガサガサと草を掻き分ける音がする。私が後ろを振り向くと高山さんが辿り着いた。
「こんな所に湖があるんだ……」
高山さんはそう言うと、湖に近づいていったが、もう湖とは呼べない。私が知っている湖ではなかった。確かに霧はあった。緩やかに濃い霧が流れていた。雪も降っていない。花も咲いていない。大きな樹木も枯れ果てていた。何かの残骸のように辺りは暗く、枯れ果てていた。湖も青くはない。暗く、汚れ、辺りの枯れ葉や枝が浮かんでいた。私も湖に近づき、高山さんの隣にしゃがんだ。
「ここに昔、妖精がいたんですよ」
私は言った。
「ようせい?」
高山さんは、私を見た。
「ええ、妖精です」
「そんな物が見えるのか?」
私はそう言うとゆっくりと歩み、窓の外の景色に気づいて近づいた。そこから見えたのは薔薇山(いばらやま)だ。あの湖のある薔薇山だ。
「高山さん……」
「なんだ?」
「ちょっと行きたいところがあるので、付き合ってくれませんか?」
「ああ……」
高山さんが返事をすると、家を出た。
家の横に薔薇畑はあった。色鮮やかに咲いていた薔薇はもう無く、ただ枯れ果てた花壇だけが残っていた。私はその道を通った。すると、目の前に聳(そび)え立つ山がある。父と私が名を付けた、薔薇山だった。山は微かに雪で染まっていた。私と高山さんは、山に入った。
山を深く行くと、霧も深まった。私は止まった。見上げると、枝に赤い糸がついている。父が付けた赤いリボンだ。もう何十年もたって、リボンという名も呼べないほどになっていた。
「ここから、入るんです」
高山さんに言った。
「何処へ行く」
「湖です」
「湖?何もないじゃないか」
「いえ、見えないだけです」
私はそう言うと、草むらに入っていった。高山さんも疑問を持ちながら入った。私は草を掻き分け掻き分けて、湖にたどり着いた。高山さんは戸惑いながら背の高い草を掻き分けて湖に向かった。
私は湖に辿り着き、驚きに満ちた。ガサガサと草を掻き分ける音がする。私が後ろを振り向くと高山さんが辿り着いた。
「こんな所に湖があるんだ……」
高山さんはそう言うと、湖に近づいていったが、もう湖とは呼べない。私が知っている湖ではなかった。確かに霧はあった。緩やかに濃い霧が流れていた。雪も降っていない。花も咲いていない。大きな樹木も枯れ果てていた。何かの残骸のように辺りは暗く、枯れ果てていた。湖も青くはない。暗く、汚れ、辺りの枯れ葉や枝が浮かんでいた。私も湖に近づき、高山さんの隣にしゃがんだ。
「ここに昔、妖精がいたんですよ」
私は言った。
「ようせい?」
高山さんは、私を見た。
「ええ、妖精です」
「そんな物が見えるのか?」