二度目の恋
次の日、美月は奴にいろいろな物を捨てられていた。美月は奴から逃げ回っていたんだ。愁は、その姿を自分の部屋の窓越しから見ていた。だけど、動かなかったんだ。美月を守ろうとはしなかった。怖かったんだ。だから夜、気になって美月の家に行った。<僕は、美月を守れなかった。自信はあったのに……守るどころか、疑った。傷ついている彼女を疑ったんだ>暗闇に、裸の美月が服で体を隠している。愁はその側にいた。奴と恵子は対峙している。愁は、その二人の会話で亨が殺されたことを知ったんだ。震えが起こった。奴を見、美月をも怖くなった。その場から離れた。その時の美月の悲しい顔は忘れない。愁の心に、ずっと焼き付いた顔だった。
 愁は立ち上がった。周りは暗いのに、上着の内ポケットからサングラスを出してかけた。そして歩き出す。噴水は止まった。風は吹く。落ち葉が疎らに散った。人はまだ多くいた。その人々の中、スラッとした髪に、スラッとした目、スラッとした体の白いコートに、ハンドバッグを持っている女性が前から歩いてきた。小綺麗な服装をしている。二人がすれ違う瞬間、風は吹いた。多くの葉が落ち葉となって、疎らに散らばった。彼女の目は青かった。だが、二人はその存在に気づきはしなかった。
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