二度目の恋
 高山は表情を変えずに、何も言わず静かに座った。その姿に愁は健太郎を見て微笑んだ。健太郎も愁を見て少し顔を綻ばした。健太郎は少し安心したのか、腕を体の後ろで組んで右足を少し曲げた。その姿を見て愁は言った。
「松永君、座ったら」
「あ、すんません」
 健太郎は高山に横に座った。
「松永君はいつも体の後ろで腕を組むよね。何で?」
「いや、特に理由は……」
「理由は無いんだ」
「いえ……」
「いえ?」
「安心するんです。体の後ろで腕を組むのって。何か心休まるって言うか……」
「そうか……」
「何かありましたか?」
「いや、気になっただけだよ」
「気になりますか?」
「ああ、ちょっとだけだ」
 その二人の会話を見て、高山は言った。
「仲いいじゃないか」
「ええ、仲いいですよ」
 愁は言った。健太郎はその言葉に高山の顔色を窺った。それは、橘愁と新人である自分が仲良さそうにいることを、高山はどう見ているのか不安だった。だが、その不安もすぐ吹き飛んだ。
「気が合ってよかった。二人はもうチームなんだ。気が合わなければやれないからな」
 高山はそう言うと、微笑んで二人を見た。
「ええ」
 愁も笑顔で返事した。健太郎も高山の隣で頷いた。
「今日集まったのも、二人の様子を見たかったからだ」
「様子?」
 愁は言った。
「ああ、別に監視する訳じゃないが、二人の会話や二人の顔が見たかった」
「二人の様子?でもまだ紹介されて、四日しかたっていないですよ」
「四日?まだ四日か。俺も物忘れが激しくなった。だが、まだ四日しかたっていないのに、おまえ達は少しずつ信頼関係を築き上げている。俺は、橘の今日みたいな笑顔を見たことがない。安心に満ちている」
 愁は、微笑んで高山の話を聞いていた。
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